私の職業奉仕(ロータリーEクラブ2730ジャパンカレント・東 岳也)

所属クラブ:

氏名:東 岳也

 平成5年3月に大学を卒業し、それまで育った愛知県一宮市から、親の故郷であった鹿児島県阿久根市へ来て阿久根市役所に入庁し、24年が経過したところである。
 これまで、教育委員会学校教育課指導係(5年)、税務課課税係(1年半)、健康福祉課介護保険係(3年半)、健康増進課介護保険係(2年)、商工観光課商工観光係(1年)、北薩広域行政事務組合総務課介護認定審査係(6年)、健康増進課介護保険係(2年)、議会事務局議事係(3年)、と課名変更を含め、8か所を経験し、平成29年4月から商工観光課観光推進係に勤務することになったが、半分以上は派遣、出向である。
 どの職場でもそうであるが、地方自治を職業とする者にとって法律というものは必ずついて回る。異動を命じられた日から勤務課に行き、そこの職員となるので、受け持つ仕事によっては全く異なった法律が関係してくることになる。
 しかし、当然ながら窓口に来られるお客様は誰が新人であり、誰がベテランであるのかとそんな事情を知る由もないわけで、異動初日から頭がパニックになることもしばしばあるが、「知らない」「わからない」で通る世界でもなく、聞かれた内容が、どの先輩(担当者)に話を聞けば、来られたお客様を待たせずに済むのか、またお願いをした担当者の横で話を聞き、対応の仕方を覚えることが重要である。
 よく、市民や議員から対応マニュアルを作成しなければとの声を聴くが、少々地方自治の現場からすると不思議でもある、確かに基本マニュアルは存在するし、異動した当初はそれを繰り返し見て覚えることにはなるが、来られたお客様の話を聞けば聞くほど、マニュアルに載っていないことが多く、マニュアル通りの話になることがないほうが多いくらいである。それでは、マニュアルを細分化すればという考えもあるが、そんなことをしていたらとてつもない量のマニュアルになり、逆にそのケースがどこに載っているのかを調べるのに手間取り、臨機応変に対応できない職員のレッテルを貼られる結果となってしまう。
 市民の方から全く同じ相談を受けて、全く同じように回答しても、一人は「あなたの説明が一番わかりやすかった」と言われるし、別の人からは「お前の説明はいっちょんわからん」と言われることもある。結果、どれだけ現場に立ち会い、どれだけ枝分かれの経験を積むことができるかで、その職員の質が変わってくるのである。
 私の職業奉仕を執筆するにあたり、前職場である議会事務局での経験を元に書かせていただくが、その中で議事係という部署を担当していた。聞きなれない言葉であると思うが、議会の本会議や委員会の議事進行を担当する部署である。
 せっかくの機会なので、1つの議案が可決されるまでの流れについて説明をさせていただくが、まず市の執行部が条例を制定したいとした場合、
1 開会1か月前 議会運営委員会(会期、いつに本議会を開催するか決定)
2 開会1週間前 議会運営委員会(初日日程内容の決定)
3 開会初日   本会議
     議案上程   その条例の案件を議題とすること
     議案説明   その議案の提案理由を市長が説明
     補足説明   市長の説明に対し担当課が補足説明
     質   疑   議案に対して議員から執行部に質問
     付託決定   議案の所属する委員会に付託するかどうか決定
4 数日後    委員会   (付託を受けた委員会の開催)
     議案説明   本会議で行われた説明のより詳細な説明
     質   疑   議員から所管課に対し質問
     意見集約   質疑をした議員がその議案に対し意見を述べる
     討   議   意見を述べた議員に対し、別の議員がその内容を質問
     討   論   議案に対し、賛成反対の意見を述べることができる
     表   決   賛成か反対かを決める
5 本会議    委員長報告 (委員会の結果等を報告)
     質   疑   委員会に所属していない議員が委員長報告に対し質問
     討   論   議案に対し、賛成反対の意見を述べることができる
     表   決   賛成か反対かを決める
 流れは各議会によって決めるため、多少違う部分があるが、大まかな流れとして、このようにして、1つの議案を議会では決定していることになる。議事係の仕事としては、この流れがスムーズにいくよう、また、正確に進行がなされているかを受け持つことになる。議事進行の次第書(進行の時に議長・委員長が話す言葉)は、全種類の進行パターンを想定し、想定される全てのパターンの次第書を作成しておくことになる。
 また、議会で話し合われた内容については、記録を作成することになるが、当市議会の場合は定例会・臨時会については外部の業者に委託しているが、委員会の記録は職員が作成し、その記録は委員長報告作成のためにこの記録作成を急ぐことになる。(上記例で言えば4と5の間)
 1日議員が話した音声データをヘッドホンで聞きながらひたすら文字を打つことになる。よく、市民の方から議員は議会開会中、本会議を行っている日数も少なく何をしているのかと言われる。議員は所管課から聞いた内容の調査を各自で行い、可決か否決か決める準備をしているが、その間、議事係の職員はこのような業務をしている。
 議会事務局の職員はこのように一つは議員が判断をしやすいように努めること、一つは市民にわかりやすいように努めること、そして賛成・反対がわかれることが多々ある議会では、特定の議員に対して偏ることなく、公平公正に対応するよう心がけることが重要であり、そのことが、職業奉仕につながることではないかと考える、また、4月から新たに勤務することになった商工観光課においてもこれまで1つの係りであったものが商工と観光でそれぞれ係りが分けられることになった。市の観光を推進していく立場において、それに関わる方々全てに対しロータリーで学ぶ職業奉仕の考え方を活かし、これからも地方自治を担う職員の一人として大切にしていきたいと考える。