私の職業奉仕(小林中央RC・永山 省吾)

所属クラブ:

氏名:永山 省吾

写真館と聞いて、皆さんはどんな風に思われるでしょうか?

デジタルカメラ全盛の時代において、皆さんの写真館のイメージはこの20年で大きく変わったのではないかと思います。

かつてはフイルムカメラが主流でしたので、写真は現像してみてからでないとちゃんと写っているかわからないという事もあり、非常に高い技術を要し、敷居の高いイメージだったのではないかと思います。

しかし現在はデジタルカメラが主流の時代。デジタルカメラはシャッターを押せばすぐに撮った写真を確認できます。今ではデジタルカメラがなくてもスマートフォンで十分綺麗な写真が誰でも撮れます。

また、以前に比べプロが使用しているデジタルカメラ、その周辺機材の価格が一般の方でも背伸びすれば手が届く時代にもなりました。それに加えSNSの普及も伴い、誰もが気軽に全世界へ自分の撮った写真を発信する事もでき、それは多くのアマチュアカメラマンを生み出す後押しにもなっています。写真だけ見ればプロ顔負けの写真ばかりです。

そんな時代において、わざわざお金を払ってまで写真館で写真を撮る事にどのような価値があるのでしょうか?

その問いに対して、私たちは「お客様のニーズに応えられる写真」を撮る事ができるという事が率直な答えだと思っています。

では具体的に「お客様のニーズに応えられる写真」とは一体どういうものなのか?

それには3つのニーズがあげられます。

まず1つ目に、どのような写真でも対応してほしいというニーズです。

写真館と聞いて写真館のスタジオでお客様の写真を撮る事が主な仕事と思われる方もいらっしゃると思いますが、実は多種多様です。

例えば、学校アルバムやウェディングから、商品撮影、広告写真、各種イベントの撮影、集合写真撮影など様々なニーズに合わせての出張撮影、また数十年前の写真を現像ソフトによる修復作業、またポスターや名刺などの写真を使った印刷物のデザイン、写真のプリントや焼き増しなど、一般の方が思われている以上に写真に関する多くのお客様のニーズに対応しています。

2つめに、スピードと柔軟性に関するニーズです。

どんな写真においてもスピードは重要です。例えば同窓会の集合写真の場合、その日のうちに集合写真をお客様の元に届ける事ができれば、幹事の方は会に参加された方へ後日写真を郵送したりといった手間がなくなるため大変喜ばれます。

広告に関わる写真においても、例えばWEBサイト制作会社から商品撮影の依頼があった場合、写真を元にキャッチコピーやデザインを加えWEBサイトを構築したりしますので、できるだけ早く写真を納品することでWEBサイト制作のスケジュールが立てやすくなります。

またどんな撮影でもイレギュラーはつきものです。

例えばウェディングの前撮りの場合、ロケーション撮影といって最近神社や海へ行って撮影する事も多くなりました。その際、天気というものはなかなか安定しないもので、さっきまで晴れていたのに急に空が曇りだす事は多々あります。ロケーション撮影では式場のプランナーやスタイリスト、メイクの方など多くのスタッフが関わる事から撮影スケジュール上時間も限られているため、そういった場合は撮影機材を使って模擬的に太陽光を作ることで撮影の質を下げることなく、スケジュールに支障をきたさないよう柔軟に対応しています。

そして最後の3つめですが、それは「声なきニーズ」に応えるという事です。

これはカメラマンとして最も大切にしている事なのですが、「声なきニーズ」とは一体どういうものなのか?

それは写真の種類によって様々で、上記に挙げた2つのニーズにも共通することではあるのですが、大きく分けて「お客様が気付いていない、またはわからないニーズ」と「お客様が気付いているが口に出せないニーズ」の2種類あります。

まず「お客様が気付いていない、またはわからないニーズ」についてお話しすると、例えば飲食店のメニュー作成の依頼があった場合、お客様は料理に関してはプロなので料理の味や見た目に非常にこだわりがあり、頭の中で理想の写真を描いています。ですが、その頭の中の理想の写真をどのように説明すればいいのか気付いていない、わからない方がほとんどです。そのため、私たちはお客様からその料理のこだわりの部分を分析し、どのように写真で見せることが最善なのか判断し、一つの料理の見せ方からメニュー全体の見せ方までお客様に提案して撮影、またメニューの構成をしていきます。そうする事で、お客様が頭の中で描いていた、またはそれ以上の写真やメニューを提供することができます。

次に「お客様が気付いているが口に出せないニーズ」についてですが、これは特に女性の撮影を例にしてお話しするとわかりやすいと思います。

女性はどんな年代の方でも美しさを追求するものだと思っています。なので写真に対する要求に関しても非常に高いものがあり、撮影の段階で美しく写るように心がけていますが、撮影後の現像ソフトによる修整を望んでいると感じるお客様がやはり多いです。ですが、お客様から直接お願いされることはほとんどありません。冗談まじりでお願いされることはまれにありますが、少なくともどこをを修正してほしいと言われることはまずありません。現像ソフトによる修整は賛否両論あると思いますが、私たちは「お客様の頭の中の現実的な理想の自分の姿」がどのようなものなのか常に探しています。女性に限らずほとんどのお客様は、ただ現実の姿を写真に残したいわけではなく、現時点での現実的な理想の姿でいたいという事を写真に望んでいるからです。なので私たちはお客様との会話や仕草の中からその思いを汲み取り、それを叶えてくれる道具として現像ソフトを活用しています。それもまた写真における時代のニーズなのだと感じています。

これらの3つのニーズから共通している事は、私たちが撮影している写真はすべて「お客様のための写真である」という事です。

デジタルカメラが主流になったことで誰でも気軽に写真が撮れる時代になり、写真の価値観も変わりつつありますが、お客様のニーズに応えられる写真を提供できる写真館の必要性は未だに変わらないように思えます。

なぜなら時代とともにカメラが変わったように、写真館に求められるお客様のニーズもまた変わっていくからです。

常に時代の求める写真を提供できるよう知識や技術を研鑽し、お客様のニーズを真摯に受け止め、それに応える写真をお客様の人生の節々に提供し続けていくことが私たちの最大の喜びであり、また私たちにしかできない職業奉仕であると考えています。

これからもささやかではありますが、お客様の思い出の瞬間にお力添えできるよう邁進しつづけていきたいと思っております。