私の職業奉仕(加治木RC・宮本 純孝)

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氏名:宮本 純孝

医師になり17年、開業して7年の時が過ぎました。日々の診療が職業による社会奉仕とするならば、医師にとって職業に奉仕することと言ったら、優れた論文を発表し医学の発展に貢献する、後身の指導を行い、さらに優秀な医師を育成するということになるのでしょう。

私は開業直前に日本赤十字社和歌山医療センターの眼科部に所属していました。当時は年間3000件以上の全国的にも屈指の手術件数を誇っており、京都大学の関連病院であるため、地方大学卒の私よりはるかに優秀な京都大学卒の医師たちと、師匠の田中康裕(元日本眼科医会理事)先生と一緒に仕事ができたことは自分のかけがえのない財産です。今でも時々和歌山に夫婦で遊びに行っては、師匠と酒を酌み交わしながら手術談義に花を咲かせています(先日も蟹をたくさんご馳走していただきました)。なぜかそのような立派な病院で最後の2年間は眼科部の病棟医長、手術場責任者を拝命されてしまったのですが、自分の患者の手術はともかく、研修医の指導、たまに自分より先輩も指導しないといけないのでそれはもっと大変でした。正直、執刀を取り上げて自分でやった方がよっぽどストレスはないです。それでも自分がリカバリーできるというところまで患者に迷惑をかけない範囲で見守るようにしていました。執刀医としての経験と責任、判断力を鍛えるためです。研修医は素直に代わってくださいと言ってくれるのですが、先輩医師はそうはいきません。ここでの忍耐力は日頃の夫婦生活で鍛えられた賜物でしょう(笑)。そういう私も偉そうなことを言えず、研修医の頃は決してお世辞にも手術がうまいとは言えませんでした。研修医の時もこの病院で研修をうけていたのですが、その時の指導医が同郷の先生で、当時は冷汗ダラダラだったと思いますが、ほとんどの私の執刀の助手についてくれて、かなり根気強く指導してくれました。さらには手術の指導医の中でも上の立場なのに自ら率先して片付けなどの雑務もやっていたので、こういう指導医になりたいと思ったものです。この先生を目標に私も研修医の指導をしていたのですが、すると自分の手術スキルも劇的に変わりました。研修医が助手につくときには手本となるような手術を心掛けましたし、研修医に手術のビデオ反省会を頼まれた時には早送りなしで付き合って分析をすることで、自分の欠点や新しいアイデアの発見につながりました。

開業して、後身を指導することもなくなり、自分の手術も、とにかく安全に行うことだけに重点をおいていましたが、病院を退官された師匠に会いに行った時に考えが変わりました。師匠は自分が知る限り、テレビに出ている先生方よりも美しい手術をされる方ですし、全国学会でいろんな機械メーカーの展示ブースでもビデオが上映されるくらいなのですが、自分の手術がうまくいったことより、自分が指導した医師が、手術が上達したことをすごく喜んでいました。しかも日赤時代にはライバル関係にあった隣の大学病院の研修医を指導していたのです。もうすぐ70歳でメスをおいてもおかしくない年齢なのですが、退官後も未だに衰えぬ手術に対する探究心と、それを後身に伝えようとする姿に私もこのままではいけないなと思いました。そこでまず師匠のような手術ビデオを作ろうと思いました。「手を早く動かして手術時間を短くしようと思うな。ゆっくりでも無駄な動きを無くしなさい。そうすれば自ずと手術時間は短くなる」というのは師匠(正確には師匠の師匠の故永田誠先生)の教えなのですが、それをビデオで表現しようと思ったら、予想以上に難しい・・・。久しぶりに自分の手術をビデオで分析したら、急に手が早くなったり、ゆっくりすぎたり、二度打ち、迷い打ちがあったりと合併症は無くてもテンポも悪く美しくない。その後、合併症がない手術だけではなく、美しい手術を心掛けた結果、手術時間も年間もっとも手術をやっていた日赤時代よりも短縮され、第69回日本臨床眼科学会、第39回日本眼科手術学会といった全国学会で、師匠とともに機械ブースで手術ビデオを上映させてもらえるまでになりました。師匠が手術を引退されたとしても、師匠の手術理念と手術の美しさを今後も伝えていきたいですし、ビデオを見た先生にこの先生の手術は無駄がなくて美しいなと思われるような手術を今後も追及していきたいと思います。

田中康裕先生をはじめ私を指導してくださった多くの指導医の先生方、ともに語り競いあった同僚達、私の未熟な指導に付き合ってくれた後輩達のおかげで眼科医としての今の自分があります。開業して直接後身を指導する機会はなくなりましたが、自分の経験や知識をなんらかの形で同業の先生方に伝えていくことが、今後の私の職業奉仕だと思いますし、そのことが自分を更に成長させてくれるものだと思っています。その一環として今は鹿児島県眼科医会会報で、「医療情報システムの安全管理に関するガイドラインについて」と題して、厚生労働省の電子カルテのガイドラインの解説を短期連載しています。さらに来年度の会長職が終える頃には持ち回りの加治木地区医師の会の会長か姶良地区医師会の理事の仕事が控えているのですが、本業・ロータリー活動と掛け持てるのか、今からかなり心配です。