私の職業奉仕(鹿児島西RC・萩原 徹)

所属クラブ:

氏名:萩原 徹

私の職業は、ロータリーの職業分類では「経営コンサルタント業」になっています。コンサルタント業も様々な分野がありますが、事業承継、事業再生に特化した受託コンサルタント業として仕事を行っています。鹿児島県でこの分野のコンサルタント業を専門に行っている企業は私の会社が1社だと思います。

企業の経営環境はまずバブルの崩壊前後で大きく変わりました。このことはGDPの推移を60年ぐらい追っかけるとよくわかります。加えて2010年ごろを境に日本の人口は減少に転じました。企業経営はこれまでの増えることを前提とした経営から減ることを前提とした経営への大転換の時期にあります。私は企業経営が「体力の時代から知力の時代に移った」、と表現しています。

事業再生に対する支援は、大まかに言いますと中小企業が経営成績と金融債務がミスマッチを起こした際の立て直し、ということになります。今後の経営のあるべき姿を数値化し、目標達成、課題解決のためのシナリオを作成し、実力に応じた返済額を金融機関と交渉することが仕事となります。

事業承継は言葉通り、現社長から後継者への事業のバトンタッチに関する様々な引継ごとを一つ一つ形にする仕事です。事業承継を資産の承継と捉えがちですが、実際には経営の承継が最も重要なことです。しかしながらまだその本質が正しく理解されてはおりません。

二つの業務は、企業の維持・存続、雇用の確保、地域の経済の安定・発展のためにはとても重要なことであると考えています。

コンサルタントという仕事は、何か起死回生の、思いもつかなかった特別な知恵を授ける仕事であると、思われる人がほとんどです。私はこの仕事に15年以上携わっていますが、私自身はそんなおこがましい仕事ではないと考えています。私の仕事は、事業再生も事業承継も主役は企業経営者とそこで働く社員の方々であり、私たちはあくまでも下支え、後押しをする立場での仕事であると考えています。いわば企業に求められる変化への対応策が機能するための触媒のようなものであると考えています。従って期間を限定して支援していきます。だらだらと何年も支援するようなことはしません。逆に言いますと、何年も外部に助言を求めるようでは経営者としての資質を疑わざるを得ないと考えています。常々経営者の方には「最良の答えは会社の中にあります。」と言っています。場合によっては「会社の中にしかありません」とも言います。

経営という言葉に様々な解釈があります。いろいろな切り口で様々な意味づけができます。私の立場では、問題解決のための施策を会社の中からうまく引き出し、それを形にする仕組みを作ることが経営と考えています。

これまで相談を受けた経営者の方に、どこに相談に行けばよいのかわからなかった、ということを伺ったことが何回かありました。課題解決の入り口として、必要な受け皿であると思いますが、そこから先は企業内で解決するのが最良の方法であると信じています。

事業再生は、いわば病人を元の健康体にする仕事です。その手法を医療になぞらえて内科的、あるいは外科的再生などという言い方をする人もいます。傷ついた中小企業を元の健全な状態に戻す仕事ですから、私の会社そのものが健全であることが大原則です。すなわち黒字であり続けることが求められます。私の会社が赤字であれば、いわば病人が病人の看病に行くようなものです。相談を受けた会社もいい迷惑に過ぎません。助言・アドバイスは他人事でも、絵空事でもあってはならず、真剣に向き合ってこそなしえる仕事であると思います。従って会社に帰った際に精も根も尽き果てていることが責任の重さ、質のバロメータになります。おかげで頭を切り替えるために夜の酒量は増えます。そのような深い事情があるにもかかわらず女房はただの大酒のみとしか見ておりません。残念な話です。

2017年問題というものがあります。これはいわゆる団塊の世代(昭和24年生まれ前後の世代)が世代交代の時期に来ているにもかかわらず、後継者難で、多くの中小企業の存続が危ぶまれる、という問題です。1年間に3万社弱の企業が廃業していますが、そのうち倒産による廃業は3分の1程度であり、残りの企業は後継者難が要因の廃業ということになります。事業再生も中小企業の存続のためにはとても難しい問題ですが、それ以上に事業承継は中小企業の存続のためのさらに難しい問題です。前述のように、そのような中小企業の問題解決の一助になれば、これに代わる達成感はありません。そうは言いながらも、いざ自分の会社の事業承継となると、いかにそれが難しいかを強く実感できます。従って、先ほどの「病人が病人を・・・」、の話と同じで、自分の会社の事業承継の道筋をどううまくつけるか、が重要になってきました。

20年前にはなかった仕事を生業にしています。これは時代の要請であろうと考えています。このような仕事につけたことをとても幸せに思います。この仕事をやり続け地域経済に貢献することができれば誠にいい仕事人生を送ることができた、といえるでしょう。