私の職業奉仕(霧島RC・寺脇 康文)

所属クラブ:

氏名:寺脇 康文

 奉仕とは自己の利益を顧みず国家、社会のために尽くすことだが、従事する自らの職業を通して社会に奉仕するというロータリアンの職業奉仕という理念こそ、奉仕の原点であり最も実践しやすく崇高なものであろう。職業を通して社会に奉仕するには職業人として極みを目指す必要がある。何故なら自らの職業がより良い社会を形成する事に繋がるのだ

から。

 ところで医薬分業という言葉を聞いた事があるだろうか。医師は診察し処方せんを発行する。薬剤師はその処方せんに基づいて調剤する。いわゆる処方と調剤を分離し医師、薬剤師がそれぞれの専門分野で業務を分担し医療の質の向上をはかるものだ。今日本の医薬分業率は約70%に達している。そもそも医薬分業の原点はヨーロッパにある。約780年前、神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世は医師と薬剤師の人的、物理的分離、医師が薬局を所有する事を禁じた。何故ならば当時、権力者は度々薬物により毒殺されていたらしい。そこでフリードリッヒ二世は医師が調剤する事を禁じ処方と調剤の間に薬剤師を介在させ身の安全を確保しようとしたのである。

 一方日本の医薬分業は明治時代に法制化されながら遅々して進まず、やっと昭和49年診療報酬の改定により処方せん料が100円から500円引き上げになったのを機に一気に進展し始めた。ヨーロッパの分業は医療の安全を守るという基本原則から出発しているのに対し日本の分業は少々不健全だ。分業すれば医師が余計な薬を処方しないだろう、自らの在庫する医薬品を気にしないで薬物治療を行うだろうと、医師を牽制し国の医療費抑制を図ろうという少々不純な概念でもって国策として進められてきた。そういう出発ではあったが、医薬分業という制度を正しい方向に導こうと多くの関係者が努力し、今や医療の質を高める、医療安全を高めるシステムとして広く認められ、前にも記したが70%を超える分業率を達成している。

 それでは薬局は医療安全確保のため、どの様な活動をしているのだろうか。最近は薬局で調剤を受けた時、領収書を発行する事が義務付けられているが、領収書の薬剤服用歴管理指導料という項目にお気付きだろうか。この薬剤服用歴管理指導料を算定するには患者さん毎に薬剤服用歴管理簿なるものを備え、決められた細かな患者さん情報を記録しなければならない。例えば氏名・生年月日・住所等・緊急時の連絡先は当然の事ながら①処方した医療機関名・医師名・処方日・処方内容②薬剤師が処方内容に疑問を感じ、処方医に問い合わせたら、その記録。③患者さんの体質やアレルギー歴・副作用歴の情報④患者さんからの相談事項⑤薬を正しく服用しているか服薬状況⑥飲み残していないか残薬状況⑦服薬中に体調の変化は起きていないか⑧薬局で自分で買った薬や健康食品等は無いか、いわゆる併用薬等の情報⑨合併症を含み今までに大きな病気をした事がないか⑩他の病院を受診していないか⑪副作用らしき症状の有無⑫薬との相互作用が認められている飲食物の摂取状況はどうか。例えば納豆とかグレープフルーツジュースとか⑬後発医薬品使用についての意向⑭お薬手帳による情報提供の状況⑮どういう服薬指導をしたかその内容等々、処方された薬を安全に服用するに当たって最低必要事項を患者さんとのインタビューを通して収集する義務が薬剤師には与えられており、自分の持っている薬学的・医学的情報と患者さんから得た患者さん情報を瞬時に頭の中でミックスして、今調剤している処方薬が患者さんにとってベストかどうかを判断している。もっとも人間の脳のキャパスティーは限られているので最近はコンピューターに内蔵されている機能を利用することが増加してきた。

 御理解頂けただろうか。薬剤師は漫然と薬を取り揃えているだけでなく、患者さんの目の見えないところで頭脳ワークをやっていることを。我々は薬をとり揃えることを計数調剤、頭脳ワークの部分を知的調剤と呼んでいる。高度な知的調剤を実践する事こそ薬の効果を高め、医療安全を守ることになる。薬剤師の職業奉仕とは、医学的・薬学的研鑚に励み、患者さんとのコミニュケーションを深め、より高度な薬物治療を目指すことにある。昼夜を問わず、深夜の業務にも臆する事なく。

 最後に私の薬剤師としての基本理念、実践訓、そして薬剤師法第1条を紹介する。

基本理念

 全ての医療活動や介護活動は患者さんや利用者に対する慈しみの心から始まる

実践訓

 えしゃく運動

 笑顔で  親切に  優しく  詳しく

(自分の仕事に詳しくなる、患者さんの質問に詳しく答える)

薬剤師法第1条

 薬剤師は調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。