私の職業奉仕(ロータリーEクラブ2730ジャパンカレント・小牧 正英)

所属クラブ:

氏名:小牧 正英

私が現在の保険代理業を営み始めたのは20歳の時でした。

当時は「生命保険は国内生保のセールスレディ、損害保険は地域密着の代理店」と棲み分けがされており、「外資系生命保険会社の代理店」という私が選んだ形態は極めて稀な存在でした。また、開業後まもなく損害保険も取扱いを始め、同業者からは「生命保険と損害保険を両方扱っていいのか」という声も寄せられました。しかし、お客様の「保険と名のつくものは難しいし、どうせならまとめて面倒を見てもらえると有難い」という声を聞く中で、業界の中では異色になろうとも、お客様の声に耳を傾けられる存在になりたいとの思いから損害保険の取扱いもスタートをしました。

 

今でこそ生命保険も損害保険も合わせて、たくさんの保険会社を取り扱う代理店が主流ではありますが、当時は同業者からも怪訝な目で見られていたのを覚えています。

 

そんなカタチでの事業開始から20年経ちますが、私の職業意識に大きく影響した出来事がいくつかありましたのでご紹介させていただきます。

 

一つ目は保険会社の経営破綻です。平成12年、当社が代理店契約を結んでいた第一火災という会社が戦後初となる経営破綻し、契約者保護機構の管理下におかれる事態が発生しました。破綻した瞬間に保険会社の社員は職を失い、お客様の契約は無保険状態となりました。保険会社の社員ですら経営破綻をテレビのニュースで知ったという状態で、私自身も破綻前日に支店長と数字の打合せをしたばかりでした。

 

最終的には契約者保護機構によって契約もある一定基準までは守られましたが、積立型とよばれる保険の満期金は削減されるものもありました。また、第一火災のみを取り扱っていた専属の代理店にはお客様を守る術はなく、鹿児島県内では当社を含めた三つの代理店で他の保険会社に引き受けを依頼するという緊急避難的措置をとらざるを得ませんでした。幸いにも複数の保険会社と代理店契約を結んでいた当社は、お客様の契約を移管することで、完璧にではありませんが保障を継続することが出来ました。

 

保険という商品は万一の際に役立たなければなりません。しかし、その万一がまさか保険会社本体に降りかかるとは想定しておらず、お客様だけでなく、代理店までもが窮地に追い込まれる事態となりました。実は私自身もそういったケースを想定して経営していたわけではなく、たまたま複数社から話をいただいて代理店契約を結んでいただけでしたが、その後新たに複数契約を増やすきっかけとなりました。

 

二つ目は東日本大震災です。当時私は日本青年会議所保険部会の部会長を務めていました。震災直後から「保険業界だからこそ出来る支援はないか」と考え、金融庁、生命保険協会、損害保険協会、各保険会社と協議し、幾つかのスキームを受け入れていただきました。その一つが全社共通の保険契約検索システムです。

 

通常保険というものは、契約者が請求しない限り支払われることはありません。しかし東日本大震災のような大規模災害の場合、家族の誰が何処の保険会社に加入していたのかすら分からないケースが想定されるため、保険金を請求したくても請求できない人が多数発生することが予想されました。そこで、名前と生年月日、住所を伝えるだけで、全ての保険会社に契約検索をかけることの出来るフリーダイヤルを設け、そこから全社に検索依頼をかけることで、保険金の受取漏れをなくすという仕組み作りを考えました。

 

正直、保険会社全社が混乱的な状況に陥っている中で、全社が前向きに取り組んでくれるという流れではありませんでしたが、関係各省ならびに協会との協議が功を奏し、数カ月の期間は要したものの実現させることが出来ました。その後は、実際にそういった取り組みが業界として行われていること、保険という職種に携わっているからこそ出来る支援があるということを伝えるため、全国各地で講演をさせていただくことに追われる日々となりました。

 

この二つの出来事に対して取り組んだ際に、共通していた認識が「お客様目線であったか」ということです。

 

商売には売り手と買い手の両者が必要であり、その両者が満足を得られなければなりません。自分が勧められて嫌な商品やサービスを提供されれば、その会社に繁栄は訪れませんし、お客様も幸せな気持ちにはなれないでしょう。自社の発展だけではなく、お客様の目線による満足度を追及してこそ、職業人としての報酬を受け取る権利が発生し、地域と共存できるのだと考えています。

 

「真のプロであるために、常に一人の消費者であれ」

当社の企業理念は、全社員の名刺に印刷されています。

職業奉仕と結びつけるには烏滸がましいかもしれませんが、私なりの職業奉仕に対する考え方も含めているつもりです。