私の職業奉仕(串良RC・吉留 一幸)

所属クラブ:

氏名:吉留 一幸

会社について振り返るといつも平成2年4月に父(現会長)から、いきなりこれからはお前が社長をやれと言われ、大変驚いたことを思い出します。その一年前、吉留産業㈲から㈱都食品へと社名変更、資本金1,000万円から2,000万円に増資した次の年の事でした。

驚くのも無理はありません。ほとんどが臨時社員で会社とは名ばかりの従業員10名程の小さな会社で私はまだ36歳、父にしても58歳とまだまだこれからと云う若さです。弊社は父が昭和32年10月に地元大崎町で甘藷澱粉製造販売を目的に設立しました。

創業間もない頃は、順調に経営は推移しておりましたが、昭和32年頃甘藷澱粉に変わり価格の安いとうもろこし澱粉の輸入が始まり、国内の甘藷澱粉価格が大暴落となり、志布志大崎管内の多くの澱粉メーカーが廃業に追い込まれる事態となり、弊社も一時期閉鎖状態に陥っていましたが、昭和41年に父の知人の勧めにより、原料が豊富な大隅半島で秋の七草と言われる葛湯、和菓子又和食の材料となる本葛の製造・販売に着手致しました。その後平成9年からさつま芋の冷凍焼き芋、焼き芋ペースト製造加工も手掛けて現在に至っております。

話は戻りますが、私は社長として、まず何を成すべきかを考えた時、当時のくず原料の製造加工は日産4t~5tしか処理できませんでした。それも夜の22時までと残業しての事です。何とか1日の処理量を上げる事は出来ないものかと日々社員と共に考えました。同業者も葛根の製造加工となると全国でわずか3社にすぎません。したがって機械も専用の物はないのです。葛根は繊維が荒く強いので、頻繁にポンプに詰まるのが最大の課題でした。そこでと石を使用した摩砕機という機械を2台設置し、その後大型の摩砕機を1台導入し、同時に仕上げの工程にいくつかの工夫をした所、それからの加工処理量は17時までに12t以上処理可能となり、飛躍的に改善できました。

それからきつい仕事の連続で人手がなかなか集まらないので、作業環境の改善、又当時の商品はクレーム(異物混入)等が多発し老朽化した工場ではもはや対策の打ちようがないと判断、これからの将来を見据え近代的な新工場を建設する以外にないと考え平成15年に精製棟(230坪)・乾燥棟(270坪)の建物にプラント設備他ステンレスタンク(撹拌用12基・回収、予備タンク7基)、冷風乾燥機2基、澱粉乳を素早く圧搾するスクリュープレス機を導入することとしました。その後、自然乾燥の方法でと思っていた乾燥棟が当初の計画と違い全く乾燥せず、結局新たに大型の冷風乾燥機2基を投入し、事業費は総額3億を超えていました。

しかし、この投資で取引先が見学に来ても称賛、納得して頂き、又この頃から高卒者を毎年のように採用する事が出来ました。

平成9年にスタートしたさつま芋の加工事業も弟の会社に弊社で仕入れた芋を委託加工しておりましたが、一日の加工処理能力が低く、又建物の老朽化、更には食品業界を取り巻く衛生基準の見直し等もあり、平成24年に㈱都食品農産加工センター(冷凍倉庫含む)を建設致しました。

これにより一日の製品(冷凍焼き芋・焼き芋ペースト)出来高3t~4tが可能となりました。

私はこの10年で2つの工場と汚水処理施設、常温倉庫と設備投資に投じた総額は7億円にもなります。それにより毎月の返済が利息も含めると相当な金額になりました。弊社にとってはあまりにも負担が大きく、さすがに楽天家の私もやっていけるか不安で夜も眠れない日が幾度となくありました。しかし3年位前から投資効果と営業力強化そして社員教育の実施等により、新規顧客の確保、生産性の向上、クレームの低下等により、売り上げも徐々に増加、返済も気にする事がなくなりました。

私はありふれた言葉ではありますが、「企業は人なり」という言葉があります。全くその通りだと思います。昔は少人数なのになぜか社員同士のトラブルが多かったのですが、15年前から高卒を採用、弊社のような田舎の小さな会社に毎年のように応募してくれ、これまでに高卒43名、中途採用10名、もちろん退社する人もおりますが、社内結婚も5組あったりして、現在パート含む55名、その平均年齢は29歳と非常に若くコミュニケーションも良く図れ、連帯感そして何よりも活気があるような気が致します。

今年は3名のリーダーには外部の研修機関が開催する管理者研修セミナーに参加させました。随分前の話ですが、私の知人から人と付き合うには運のいい人と付き合いなさい、運の悪い人と付き合うと自分の運気も下がってしまうからと教えられました。その意味では私は運のいい人たちに多く接することが出来、幸いだったと思います。特に鹿児島市内のN氏とは早30年の付き合いになろうとしています。彼の会社は当時100名程の社員だったのですが、現在1,900名の従業員を抱える企業に成長しています。

会社でNo.2のN氏は社員に対していつも毒舌で厳しく叱ったりしていましたが、なぜか辞める人がいないのです。N氏の人に接する姿勢はまさに目配り気配りそして思いやりが徹底しているところなのです。

部下に対しても深い愛があるからこそついて来る、彼こそは人財育成のスペシャリストだと思います。尊敬するそんなN氏に出会えた事、そして良い刺激を受け常に前向きになれる事に出会いの素晴らしさを感じる次第です。私は企業の「停滞は後退」だと考えています。これからも採用に関してもモチベーションが高く、御縁があれば採用し続け会社を更なる高みへと指針を作成し次の世代へ引き継ぎを行いたいと考えます。

今日、原稿依頼された桃木職業奉仕委員長に改めて足もとを見る良い機会を与えて下さり、又ロータリーの教えの中にあります、「欲すればまず与えよ」を今後どの様に実践するのか社会に地域に貢献できる企業にと考える場を頂き感謝致します。