私の職業奉仕(宮崎RC・水居 徹)
2018年01月11日 11時11分更新
所属クラブ:宮崎ロータリークラブ
氏名:水居 徹
職業奉仕はロータリーの神髄である。天職という言葉があるが、自らの職業は、いろいろな経緯を経ているとしても、天が与えてくれたものと信じている。職業を通じて社会に奉仕する、社会に奉仕というと大げさでおこがましいかもとも思う。私は、職業を通じ社会の一角にきちんと存在していればいいのかなと思っている。
大学を出て、東京に本社のある電機メーカーに入社した。そこでパソコンの営業を担当した。とにかく売上達成が唯一の目標であった。入社した時のパソコンは他社の人気商品を模倣したものであった。しかも販売促進策までサルマネであった。年度末には数字達成のために販売会社に商品を「押し込み」、新年度が落ち着いた頃、それを戻入したり、対策費で補てんしたりしていた。売れればいい、数字が上がればいいの世界だった。もちろん、日本全体がそうだったのかもしれない。
売れないパソコンを売るために、週に3日くらいは秋葉原のショップで応援販売をしていた。当時はヘルパー法もなく、そのショップのユニフォームを着用し、自社のパソコンに誘導していた。押し売り営業がまだまだ主流で、根性セールスという言葉もよく使われていた。しかし、売れないのだ。当時S社のパソコンが売れていた。S社は大学の先生や学生をターゲットにしていた。彼らはパソコンをゲーム使うのではなく、学問や研究の計算に使っていた。S社は唯一OSと言われる基本ソフトを搭載しておらず、自由に選択できたのだ。私の売っていたパソコンはメーカーがこれでいいだろうという仕様になっていた。それは人気商品の模倣であり、そこに独自の主張はなかった。
その時に私は、売る商品ではなく売れる商品、逆に言えば、欲しい商品、買いたい商品をメーカーは作るべきと確信した。バブル時代に突入し、人をだましてでも売れれば稼げばという風潮に日本中が染まった。所属していた会社もその風潮に見事に染まり、私は欲しい商品をつくるべきと主張したが、原価が高くなれば利益は薄くなる、ブランドで押し出せば売れるなど顧客不在の議論が跋扈していた。その状態に嫌気がさし、その会社を辞めた。30歳の誕生日が目前の時だった。
当初は一人で、当時はまだ小さかったソフト会社等の営業を手伝い、販路開拓をおこなった。私が一貫させたのは、お客が欲しがる商品を作ることであった。幸い、ソフト会社はその意思が強いところが多く、すべてとは言えないが、多くは成功し、大きな会社となった。一方で、辞めた会社は粉飾に近い経営が表面化し上場廃止寸前になっている。ごまかしても数字を上げればいいという感覚は今でも残っていたのかと思わせる。
時が移り、縁あって故郷でITサービス会社を22年前に設立し、今にいたっている。1998年に宮崎ロータリークラブに入会、義理で入った感も強く、出席もままならず、3年目に東京の仕事が忙しくなって退会した。ところが、数か月後、東京で出会った取引先の人物にロータリーに誘われた。東京西ロータリークラブに入会したが、そこで多くの先輩方にロータリーを教わった。とにかく例会出席100%をキープしろと言われ、なんとか出席し続けた。出席をすると180人のメンバーと毎回話をする。スポンサーの職業は練り物製造の方と理容師の方であった。建設業、ホテル、内装業、運輸、歌手、医師、弁護士、設計士、服飾、通販と多種多様な職業人が存在していた。一般には知られていないが、素晴らしい顧客層を持ち、売上や利益を確保している方々ばかりであった。共通して言えるのは顧客満足に強い志向を持っている方々であった。四つのテストがその指針となっている。
宮崎に戻り、宮崎クラブに再入会し、以前と違い100%出席を続けている今、ロータリーの職業奉仕と四つのテストは自分の職業における大きな指針となっている。
ITの世界は電子空間を商売にしていて、モノが存在しない。ホームページを作る場合、20万円のものもあれば100万円のものもある。なかにはその金額差がわからないものもある。
仕事で、ホームページのリニューアルをすることが多いのだが、「ぼられている」ケースを多く見かける。ホームページを知らないお客に、30万円もかからないようなホームページとパソコンをセットにして200万円という高額な金額でリース契約、「月額4万円でホームページが持てますよ」と営業している連中がいたり、お客がわからないことをいいことに、セキュリティ対策の機器ですと低レベルの機器を正規の値段の5倍ほどで売りつけている場合があったりと驚くようなことが多い。
当社はいたずらに安くするつもりはない。かかるコストと労力を加味して適正な利益を確保している。お客様がもうかっている会社とか、規模が大きい会社だから利益を増やすような見積もりはしない。そこには四つのテストが存在している。顧客にも当社にも取引によりお互いメリットが発生する、当社の提供したITを活用していただいて、収益を伸ばしていただき、雇用や税が多くなれば、地域社会が活性化する。
そのためには当社も商品やサービスを顧客がほしいもの、使いたいもの、納得できる金額であるものに作り上げていかないといけない。その顧客の業種や職種をよく調査し、その顧客がさらにその職業を通じて社会に貢献できるようなサービスを提供することが、職業奉仕の連鎖であり、素晴らしい社会が成り立っていくと信じている。職業奉仕と四つのテストに出会った、ロータリーにただただ感謝している。