私の職業奉仕(鹿児島SWRC・森 妙子)

所属クラブ:

氏名:森 妙子

私の職業は1700年代の骨董から現代の作家の作品まで、幅広く取り扱っている小売業です。

20年間、夫の家業を手伝い穏やかな日々を送っていた私でしたが、人生を変えたのは

旅先で出会った18cmの皿でした。

それは250年前、有田で作られた焼物、いわゆる「古伊万里」と知りました。

それに魅了された私は収集しながら審美眼を養っていきました。

次第に自信のようなものが出来、平成元年8月会社を設立し、天文館に

「ギャラリービーンズ」をオープンさせました。

経営のテーマは「用の美、使って楽しむ骨董品」です。

当社は高価な美術品を扱っているわけではありません。日本に長く滞在したイギリス人の、

バジル・ホール・チェンバレン東京大学教授は、「日常生活に用いるものは

出来る限り目を喜ばせ、心の糧となるようなものであるべきだ。これが日本人の人生観

である」と言われました。それにとても共感したからです。

前置きが長くなりましたが、今回の大重ガバナーの重要テーマは「職業奉仕」です。

職業奉仕と聞くと、今でもIPS細胞の開発に成功された山中伸也教授が思いつきます。

会社設立当時は、売り上げを伸ばすこと、いい決算を出すことに重きを置いていました。

もちろんそれは一番大事なことです。しかしただ物を売るだけですむ世界ではありません。

その物の価値を知っていることはもちろんですが、商品を通じ、お客様と文化・歴史・

伝統などをお話します。

ひとつ漆器について書きたいと思います。漆器の中に「蒔絵」というのがあります。

くりぬいた木に何度も漆を塗った上に、金銀で絵を描く手法です。その蒔絵が施された

お椀をお客様にお勧めした際に、お客様が言われる言葉は

「綺麗、すばらしい。こういうのを使ったらどんなに幸せでしょう」と言われるか、

「勿体無くて使えない、手入れが大変」の両方です。

そこで説明するのです。「日本最古の蒔絵は、8世紀の正倉院御物の中にあります。

蒔絵は日本独特の技術で、日本文化を純粋に育んだものです。大事に使っていただければ、

一生使えます」とわかりやすく丁寧に説明をします。そこでお客様が品物に

感動され、価格に満足され何度も足をお運びいただければ、店も繁盛し結果、私共は

文化の浸透に貢献できるのです。それがこの仕事をしていく上での喜びであり、職業奉仕

と考えております。

時代の変化とグローバル化は、日本人の生活環境を大きく変え、伝統的な生活に根付いた文化を消滅させる恐れがあります。日本文化の崩壊と言われています。

しかし一方で、グローバル化は日本人の生活文化が、世界で注目されるチャンスでも

あります。優れた日本文化を見失わず、本質を現代の生活に投影することが出来れば

再び注目されるでしょう。欧米人の間では日本文化は羨望の目で見られているようです。

品物を通して若い世代に、日本文化・歴史・伝統を知ってもらい、また身近に置いて

いただき幸せを感じて頂ければ、それが私の職業奉仕と考えております。