私の職業奉仕(姶良RC・友利 優一)

所属クラブ:

氏名:友利 優一

この4月に他院から転職してきた歯科衛生士のS君に言われた。「どうしてこの医院ではインプラント、オールセラミック等の自費治療を勧めないんですか?儲かるし、きれいだし・・・・」

 医院の売り上げを心配してくれるスタッフは有り難いが少々説明をしなければならない。私はインプラントを止めてもう7年になる。高価なインプラントは儲かるが消費者である患者さんは当然保証を求める。オールセラミックはきれいだがよく割れる。インプラントはむし歯にはならないが歯周病にはなる。元々歯周病でダメになった人にはリスクがある。施術後はきめ細やかな長期に亘るアフターケアが必要だ。責任が持てなければやるべきではない。施術して20年が近づいてくるともう患者さんと長生き競争をしているようだ。

 開業して早や30年、自分の年齢を考えた場合、あとどの位の期間責任が持てるのかを考えている。必要な場合は若くて優秀な先生を紹介している。 当院のモットーは「自分が受けたい治療を患者さんと相談する」だ。患者さんのこの状態が自分だったらどうして欲しいかを考える。自分が受けたい治療が種々の理由で困難なら別の良い方法を患者さんと相談することになる。外傷や義歯、歯周病、歯の痛み等を治療する場合も同様で、一人ひとりに仕事や生活の都合があるからだ。 初めて公にする私のささやかな「職業理念」だ。

この度、大重ガバナーのご意向で職業奉仕を考える事になった。職業奉仕が分りにくいという話をよく聞き、社会奉仕とどの部分が違うのかとか、昔から議論がかまびすしい。多くのロータリアンは一人ひとりが一国一城の主なので独自の解釈で立派にそれを実践し成果を挙げて来られたと思う。

シェルドンの提唱した職業奉仕は相手の立場を考えて公正な取引、仕事をしようとするものだ。彼はビジネススクールを設立し販売術も教えていた。そして所謂「顧客ロイヤリテイー」の高い顧客(お得意様、リピーター)を如何に多く持てるかが利益の源泉だとも言っている。その為のあらゆる努力(serves)が職業奉仕だ。それが1910年8月シカゴの年次大会で発せられた「He profits most who serves his fellows best」(最も奉仕する者、最も報われる)だ。

そう考えると我がクラブの会員は間違いなく全員が職業奉仕を実践していると言える。我がクラブは16名の小さな所帯だが仲が良く尊敬し合い、これまでお互い助け合ってきた。

先日、南日本新聞に鹿児島県下創業100年以上の企業が紹介され、酒匂久輝会員の「(株)ひさご屋」が創業183年で堂々の9位だった。卓話で1834年(天保5年)以来連綿と引き継がれてきた事業の歴史を聞き、まさに職業奉仕精神の賜物だと感動した。

職業奉仕の理念を積極的に実践して事業を大きく拡大する人もいれば意識せずとも人生観や理念として持ち、その事業をもとに素晴らしい社会奉仕を実践している経営者も多い。ロータリアンであるか否かは関係なく。

「職業奉仕と社会奉仕は大空に美しく輝く七色の虹の如きもの。遠くで眺めると色の区別が鮮やかにわかるが、さて確認しようと近寄ってみると漠然としてその境が不明である。」(川野PG 熊谷RC)

 今年度の規定審議会では職業奉仕の項に「自己の職業上の手腕を社会の問題やニーズに役立てるためにクラブが開発したプロジェクトに応える事が出来る」と追加された。これはまさに社会奉仕そのものではないか。

 菊池 平P. Gも月信2月号で「職業奉仕と社会奉仕は垣根が無くなり2つの中心を調和させて現状から発展させていく事が可能ではないか」と述べておられる。 今回、大重ガバナーが会員に向けて職業奉仕を問いかけた事は大いに意義がある。会員一人ひとりが改めて自分の仕事を振り返り、再スタートさせるきっかけを作って頂いたと思う。千人の職業人がいれば千もの職業奉仕があるという。

 ロータリーは時代と共に変わって適応していかなければならないがシェルドンが最初に提唱した職業奉仕の理念は大切にしたいものだ。